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イタリアの食文化を10の料理から解き明かす『10皿でわかるイタリア料理』

出版社:日本経済新聞出版社
定 価:1500円(税別)

著者は『ガンベロ・ロッソ』唯一の日本人審査員 宮嶋勲氏

年のうち3分の1をイタリアで生活する宮嶋勲氏。今年イタリア本国から『グランディ・クリュ・ディタリア最優秀外国人ジャーナリスト賞』を受賞した。ワインガイドの試飲スタッフやレストランガイドの執筆スタッフとして現地で活動中の氏にとっては、1983年のローマでの勤務を経て30年目の、記念すべき賞である。

本書はイタリアを代表する料理のなかから、著者が厳選した10皿をテーマにして、イタリア料理の本質、それらを育んできたイタリア人気質に触れた新スタイルのグルメ本であり、民族や文明が複雑に入り組み、 多様性を生み出してきたイタリアならではの食文化を語る一冊である。

10皿を本文中の“小見出し”を引用して紹介すると 

  • 第1皿:理想の前菜・おつまみ 生ハムとサラミ
  • 第2皿:カプレーゼとはシンプルさの美学 カプレーゼ
  • 第3皿:日本の「もり蕎麦」、ペペロンチーノ アリオ・オリオ・エ・ペペロンチーノ
  • 第4皿:カルボナーラは「三丁目の夕日」的料理 カルボナーラ・スパゲッティ
  • 第5皿:海の幸を使っていないのに、海を感じさせる一品 ペスト・ジェノヴェーゼ
  • 第6皿:バターなくしてリゾットにあらず リゾット
  • 第7皿:「御本家」ナポリ風とローマ風の違い ピッツァ
  • 第8皿:冬の到来を告げる風物詩 バーニャ・カウダ
  • 第9皿:手を加えなければ加えないほどよいステーキ フィオレンティーナ
  • 第10皿:シンプルかつ自由なレシピ ティラミス

上記の形容から、素材を生かしたシンプルさの美学、地元料理をこよなく愛す人間性が伝わってくるが、「長い間国家が分裂していたことで、庶民の生活は貧窮し、複雑な料理を発展させる余裕がなかった彼らは素朴な素材を使ったシンプルな料理でいかに美味しいものをつくるかに知恵を絞ってきた」と著者は述べている。
昨今日本でも人気のバーニャ・カウダや、冷蔵設備のなかった時代に肉を保存する必要から生まれたハムやサラミも然りで、これらは貧しい生活の知恵から生み出された産物である。そして、そこに存在するのは、食べることに工夫を重ねてきた頑強な気質のイタリア人であり、それがイタリアらしさ、人間臭さ、魅力の源になっている。
本書を読み終えた後は、10皿のなかの好みの一皿を肴に、好みのイタリアワインで時を過ごしてみてはいかが。

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